概要 / description

　幕末から昭和前期まで三代続いた彫金師府川一則（ふかわかずのり）家に伝来した資料群。
　初代一則（1824～1876）は、十返舎一九の弟子であった戯作者五返舎半九の子で、葛飾北斎に入門、北嶺（北岑とも）と号して、絵師として活動した。北斎の死後は、後藤門流の東益常門に入り装剣金工の道に転じた。明治維新の際、東征大総督有栖川宮熾仁親王の佩刀の拵を調進したことから、熾仁親王より「柳蛙子」の号を授けられ有栖川宮家御用となった。
　初代の没後は、二人の息子が後を継いだ。二代一則（慶三郎　1855～1919）は、初代の長男で、片切彫を得意とし日本美術院正教員を務めた。三代一則は（俊五郎　1870～1934）は、初代の四男で、兄に師事し彫金界で活躍した。
　本資料群は、三代一則の遺族から寄贈された注文帳や彫金道具などを中心に、二代一則の子孫や、二代の門弟でその金工を継承した府川一信（宮坂開示 1891～1979）が受け継いだ初代一則や二代の作品・書画類を含む。転換期の日本金工史を知る上で重要資料の一つといえる。