概要 / description

　日本近代文学を代表する作家永井荷風（本名壮吉　1879～1959）とその家族に関する資料群。荷風の弟威三郎（1887～1971）の遺族からの寄贈による。
　荷風と威三郎の父・永井久一郎（1852～1913）は、尾張藩出身で、旧藩時代には儒学を修め、明治維新後米国留学を経て内務省や文部省等の官僚を歴任した。明治30年(1897)官を辞した後は、日本郵船に入り上海支店長等を務めた。
　久一郎の長男荷風は、早くから作家活動をしながら父の意向で米国や仏国へ外遊、帰国後は慶應義塾文学科主任教授を務めながら数多くの作品を発表した。また、三男の威三郎（1887～1971）は、農学者となり米・独へ留学、東京高等農林学校（現東京農工大学）等で教鞭を執った。
　本資料群は、久一郎が残した文書類や漢学資料、威三郎が兄荷風や親類友人等から受け取った書簡類、そして家族の写真等からなる。本資料群を通じて、明治期の官僚・実業家永井久一郎の事歴を知るとともに、永井荷風の文学的思想形成の基盤となった家庭環境を理解することができる。